1959年に、村の夜警と都会の若い男性との友情を綴った「時は止まりぬ」で初の長編劇映画を発表。その後ミラノから来た若い二人の男が初めての仕事で出会う困難と夢を描いた「定職」は1961年ヴェネチア国際映画祭でOCIC賞と批評家賞をダブル受賞したほか、国際的な映画祭で数々の賞に輝いた。続く「婚約者たち」(63)では、北からの労働力の流出により南イタリアの工業化が急速に発展した後の顛末を描いた。この3本は、ドキュメンタリー出身ならではの観察力にもとづいた演出による初期の傑作三部作として評価が高い。
1978年、19世紀末ベルガモの農夫の生活を描いた珠玉の名作『木靴の樹』でカンヌ国際映画祭グランプリ(現在のパルム・ドール)を受賞。1988年には、ヨーゼフ・ロートの原作を忠実に映画化した『聖なる酔っぱらいの伝説』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。2001年カンヌ国際映画祭に出品した『ジョヴァンニ』は、16世紀初頭ジョヴァンニ・デ・メディチの神聖ローマ帝国軍との激しい戦闘を描いた作品。イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を9部門で受賞し、イタリアで大成功を収めた。
2005年、オルミは友人でもあるアッバス・キアロスタミ、ケン・ローチとともに、オムニバス映画『明日へのチケット』の一篇を監督。2006年には、時代に絶望した哲学教授がポー川近隣に住む人々から「キリストさん」と呼ばれるようになるまでを描く『ポー川のひかり』を発表。2008年、オルミ監督の長年の功績を称えヴェネチア国際映画祭は、栄誉金獅子賞を贈呈した他、ヴェニス・ディ部門が発表した「後世に遺したいイタリア映画100」で、フェリーニ、ヴィスコンティらと並んで『木靴の樹』、「定職」が選ばれた。
2011年には移民とキリスト教の問題について描いた『楽園からの旅人』を発表し、ヴェネチア国際映画祭で招待作として上映された。自らを「熱心なキリスト教徒」と呼ぶオルミ監督は、時に教会批判も辞さないが、その作品世界に通底するゆるぎない信仰心を指摘する批評家は多い。
1976年オルミ一家(妻のロレダナ・デット、子供のファビオ、エリザベッタ、アンドレア)は、都会の生活よりも田舎の自然に囲まれる生活を選び、ミラノを離れ本作の舞台でもあるアジアーゴ高原に移り住む。
フィルモグラフィ
「時は止まりぬ」 Il tempo si è fermato(59)
「定職」 Il posto(61)
「婚約者たち」 I fidanzati(63)
「人、来たれり」 E venne un uomo(65)
「ジョバンニの物語」 Racconti di giovani amori(67)
「或る日」 Un certo giorno(69)
「イ・レクペランティ」 I recuperanti(70)
「夏の間」 Durante l'estate(71)
「事件の状況」 La circostanza(74)
『木靴の樹』 L' albero degli zoccoli(78)
「カミーナ、カミーナ」 Camminacammina(83)
『偽りの晩餐』 Lunga vita alla signora!(87)
『聖なる酔っぱらいの伝説』 La leggenda del santo bevitore(88)
12 registi per 12 città(90)※オムニバス・ドキュメンタリー(ミラノのパート)
Lungo il fiume(92)※ドキュメンタリー
「ボスコ・ヴェッキオの秘密」 Il segreto del bosco vecchio(93)
「創世記・天地創造と大洪水」 Genesi: La creazione e il diluvio(94)
『ジョヴァンニ』 Il Mestiere delle armi(01)
「屏風の陰で歌いながら」 Cantando dietro i paraventi(03)
『明日へのチケット』Tickets(05)
『ポー川のひかり』Centochiodi(06)
Terra Madre(09)※ドキュメンタリー
Rupi del Vino(09)※ドキュメンタリー
『楽園からの旅人』Il villaggio di cartone(11)
『緑はよみがる』Torneranno i prati(14)