1907年、私生児として生まれたヴィオレット。母親に愛されない想いを抱きつづける彼女は、やがてその想いを小説に書くことに目覚める。そしてその後、ボーヴォワールと出会い、その助けによって、1946年に処女作「窒息」を出版。ボーヴォワールだけでなく、カミュ、サルトル、ジュネら錚々たる作家に絶賛されるが、女性として初めて、自身の生と性を赤裸々に書いたその小説は、当時の社会には受け入れられなかった。傷ついたヴィオレットは精神さえも病むが、ボーヴォワールの支えによって書き続ける。そして彼女は南仏プロヴァンスの村と出会う。パリを離れ、プロヴァンスに移り、そこで自身の集大成ともいえる新作「私生児」の執筆にとりかかるヴィオレット。母との確執、報われぬ愛、そしてボーヴォワールとの絆。彼女は、自分の人生のすべてを“書くこと”に注ぎ込んでいく……。
ヴィオレットを演じるのはセザール賞ノミネート5回、2度の受賞に輝くエマニュエル・ドゥヴォス。実際のヴィオレットに似せた「付け鼻」をつけて、記憶に残る名演を見せる。ボーヴォワールには、こちらも同じくセザール賞を2度受賞しているサンドリーヌ・キベルラン。ヴィオレットを援助する香水メーカー・ゲランの経営者ジャックに、オリヴィエ・グルメ。映画『ホーリー・モーターズ』の名カメラマン、イヴ・カープの映像、40〜60年代の新しい文化が花開こうとするパリの風俗、フェミニンなヴィオレットとシックなボーヴォワールの対照的なファッションなども見どころである。『セラフィーヌの庭』でセザール賞最優秀作品賞ほか7冠に輝いた名匠マルタン・プロヴォが、人生を“芸術”に昇華する苦しみと喜びを見事に描いた。