Introduction
作品紹介
  • 2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエ(ウー・レンリン)と障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合い結婚。やがて、互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる……。ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点(5点が満点)をマークし、金熊賞最有力と絶賛されるも無冠。しかし、中国で公開されると、レビューサイトでも本年度中国映画ベスト1の評価を得てじわじわ広がり、公開後2ヶ月経ってからTikTokが火付け役となり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録。<奇跡の映画>とまで呼ばれたのが、本作『小さき麦の花』である。
  • 監督は、長編4作目の『僕たちの家に帰ろう』(2014)が日本公開されているリー・ルイジュン。『白鶴に乗って』(2012)がベネチア映画祭オリゾンティ部門、『路過未来』(2017)がカンヌ映画祭ある視点部門、そして本作がベルリン映画祭コンペ部門に選ばれ、世界3大映画祭でキャリアを重ねてきた期待の監督だ。近年、ビー・ガン(『ロング・デイズ・ジャーニー この世の涯てへ』)やグー・シャオガン(『春江水暖〜しゅんこうすいだん』)など中国新世代監督が世界から注目されてきたが、「(本作には)第5世代の名作の痕跡を見ることができる。あるいは、ジャ・ジャンクーの記憶に残る映画と関連付けることもできる。『小さき麦の花』は、これら著名な現代中国の名作との比較に値する」(International Cinephile Society)と評され、新たな名作とも称賛されている。
  • 妻のクイインを演じるのは、大ヒットしたドラマ『彼と私と両家の事情』で「国民の嫁」と呼ばれ、以来数々のテレビドラマや2018年中国No.1ヒット『オペレーション:レッド・シー』などで知られる国民的女優ハイ・チン。ノーメイクで農村の女性になりきった名演は必見だ。夫のヨウティエを演じるのは、監督の叔父で実際に農民でもあるウー・レンリン。彼らふたりが互いに寄り添いながら、麦の種を植え、自分たちの手で質素な家を作り、大地とともに慎ましく美しく生きる姿が、人間のいちばん大切な価値観は何なのかと探している現代の観客の心を揺り動かし、<奇跡>の大ヒットを呼び起こしたと言えるだろう。
  • ストーリーには貧しい農民として生きることの辛さが描かれている。にも関わらず、観客の胸に残るのは彼らの幸福、彼らの愛の美しさだ。そこにはリー・ルイジュン監督の過去作にもあった、リアリズムの中にふと現れるファンタジックな表現が大きく貢献している。本作でも、3人目の家族ともいうべきロバの仕草、ひよこを孵化させる段ボールの光、そして麦の種で互いの手の甲につくる花のしるしなど、ルイジュン監督らしい描写が素晴らしい。さらには『神水の中のナイフ』、『巡礼の約束』で知られる気鋭のカメラマンのワン・ウェイホアや中国金鶏奨にノミネートされた経験を持つ音響のワン・チャンルイ、イラン出身の作曲家・ピアニストで『風が吹くまま』や『スプリング・フィーバー』なども手掛けるペイマン・ヤズダニアンの音楽も農村の四季の喜びと美しさを伝えている。
2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエ(ウー・レンリン)と障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合い結婚。やがて、互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる……。ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点(5点が満点)をマークし、金熊賞最有力と絶賛されるも無冠。しかし、中国で公開されると、レビューサイトでも本年度中国映画ベスト1の評価を得てじわじわ広がり、公開後2ヶ月経ってからTikTokが火付け役となり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録。<奇跡の映画>とまで呼ばれたのが、本作『小さき麦の花』である。
監督は、長編4作目の『僕たちの家に帰ろう』(2014)が日本公開されているリー・ルイジュン。『白鶴に乗って』(2012)がベネチア映画祭オリゾンティ部門、『路過未来』(2017)がカンヌ映画祭ある視点部門、そして本作がベルリン映画祭コンペ部門に選ばれ、世界3大映画祭でキャリアを重ねてきた期待の監督だ。近年、ビー・ガン(『ロング・デイズ・ジャーニー この世の涯てへ』)やグー・シャオガン(『春江水暖〜しゅんこうすいだん』)など中国新世代監督が世界から注目されてきたが、「(本作には)第5世代の名作の痕跡を見ることができる。あるいは、ジャ・ジャンクーの記憶に残る映画と関連付けることもできる。『小さき麦の花』は、これら著名な現代中国の名作との比較に値する」(International Cinephile Society)と評され、新たな名作とも称賛されている。
妻のクイインを演じるのは、大ヒットしたドラマ『彼と私と両家の事情』で「国民の嫁」と呼ばれ、以来数々のテレビドラマや2018年中国No.1ヒット『オペレーション:レッド・シー』などで知られる国民的女優ハイ・チン。ノーメイクで農村の女性になりきった名演は必見だ。夫のヨウティエを演じるのは、監督の叔父で実際に農民でもあるウー・レンリン。彼らふたりが互いに寄り添いながら、麦の種を植え、自分たちの手で質素な家を作り、大地とともに慎ましく美しく生きる姿が、人間のいちばん大切な価値観は何なのかと探している現代の観客の心を揺り動かし、<奇跡>の大ヒットを呼び起こしたと言えるだろう。
ストーリーには貧しい農民として生きることの辛さが描かれている。にも関わらず、観客の胸に残るのは彼らの幸福、彼らの愛の美しさだ。そこにはリー・ルイジュン監督の過去作にもあった、リアリズムの中にふと現れるファンタジックな表現が大きく貢献している。本作でも、3人目の家族ともいうべきロバの仕草、ひよこを孵化させる段ボールの光、そして麦の種で互いの手の甲につくる花のしるしなど、ルイジュン監督らしい描写が素晴らしい。さらには『神水の中のナイフ』、『巡礼の約束』で知られる気鋭のカメラマンのワン・ウェイホアや中国金鶏奨にノミネートされた経験を持つ音響のワン・チャンルイ、イラン出身の作曲家・ピアニストで『風が吹くまま』や『スプリング・フィーバー』なども手掛けるペイマン・ヤズダニアンの音楽も農村の四季の喜びと美しさを伝えている。
Story
物語
2011年、中国西北地方の農村。
貧しい農民ヨウティエ(有鉄)は、マー(馬)家の四男。
両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトン(有銅)の家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。
一方、内気で体に障がいがあるクイイン(貴英)もまた厄介者だった。
互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。
ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。
ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。
ある日、家を建てるためにヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。
そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。
クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ロバと、ヨウティエと、クイインと。
力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。
だが、その幸福は長くは続かなかった——。
Cast
キャスト
ヨウティエ:ウー・レンリン
本作の舞台となった甘粛省の村で実際に耕作を営む農民であり、監督の叔父(叔母の夫)に当たる。『老驢頭(The Old Donkey)』(10)、『白鶴に乗って』(12)など、リー・ルイジュン監督の映画に複数出演。なお本作でヨウティエの兄ヨウトン(有銅)の妻を演じたワン・ツァイランが、ウーの実際の妻(監督の叔母)である。
クイイン:ハイ・チン
1977年、南京生まれ。7歳で演技を始める。1997年に北京電影学院演技科に入学し、卒業後はテレビドラマを中心に活躍。『蝸居』(09)、『彼と私と両家の事情』(09)などに主演して人気を博し、特に日本でも放映された『彼と私と両家の事情』での人気は高く、以来「国民の嫁」の異名で親しまれている。映画出演作にはチェン・カイコー監督作『運命の子』(10)、日本映画『家族はつらいよ』の中国版リメイク作『麻煩家族(What a Wonderful Family)』(17)、中国で2018年No.1ヒットを記録したアクション映画『オペレーション:レッド・シー』(18)など。中国で最も高く評価され、愛されている女優の一人。本作では障がいのある農民の妻役にノーメイクで臨み、その役作りのためにヨウティエ役のウー・レンリンの家に10ヶ月滞在して実際に生活し、その土地に溶け込んだ見事な演技を見せている。
Director
監督
1983年、中国・甘粛省生まれ。2003年、国家ラジオ映画テレビ管理幹部学院(現 山西伝媒学院)卒業。これまでに5本の長編映画を監督し、人と人との関係性や土地、急速に変化する中国の片田舎の“家族”や“生”や“死”に焦点を当ててきた。また、撮影は主に親しい友人や親戚と共に、監督自身の故郷で行っている。これまでの作品はベネチア、カンヌ、ベルリンの世界三大映画祭に出品され、『僕たちの家に帰ろう』は2014年東京国際映画祭コンペティション部門に出品、日本でも公開された。長編6作目となる本作では自身の故郷・甘粛省張掖市花牆子村を舞台に、貧しい農民夫婦が、逆境の中でお互いを思い、守り合うようになっていくまでの愛の物語を描き、2022年ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出。金熊賞有力候補と絶賛された。
Director's Comment
監督の言葉
この映画を撮って、私は映画監督も農民と同じだと思いました。どちらも時間、人、そして生命の問題に取り組んでいるのです。農民は一生その運命を土地と時間に捧げます。我々も同じように、映画の運命を土地と時間に捧げます。大地からは作物が育つだけでなく、家も育てば愛情も育つし、文学や芸術、映画も育つものだと思います。全て大地から来たもの、当然大地から来たものなのです。今足で踏みしめている大地が、自然の中の私たちの「母親」です。労働改造に送られた囚人も、興収50億を叩きだす映画監督も同じことです。種をもらい、真面目に植えたら、大地は作物を与えてくれる。大地は最も分け隔てのない存在なのです。
Behind the Miracle
なぜ奇跡は起きたのか
公開後2ヶ月近くが経過してからの異例の大ヒット。
今年9月初め、『小さき麦の花(中国語題:隠入塵煙)』は突如中国の上映中映画の日別興行収入トップに躍り出た。本作が中国で劇場公開されたのは7月8日だから、封切り後2ヶ月近く経ってからの快挙ということになる。公開直後から中国の大手映画レビューサイト「豆瓣」で今年公開の中国映画トップの点数をマークするなど、映画を見た観客からの評価は非常に高かったものの、他の多くの「文芸片(=商業目的でなく、芸術性の高い映画)」と同様、興行的には大予算のエンタテインメント作の数字とは比べものにならなかった。それが公開2ヶ月後、急に上映中作品で一番の大入り映画になったのだから、異例中の異例である。入場者はその後もしばらく増え続け、社会現象と言えるほどのブームとなり、メディアは興行上の「奇跡」であると書き立てた。いったい何が起きたのか。
TikTokが火付け役。都市に暮らす若い世代を中心にした観客の支持。
火付け役となったのは、どうやら中国の動画投稿SNS「Douyin」(中国版TikTok)らしい。8月末、複数の人気の映画解説アカウントで本作のあらすじが紹介されたところ、「泣ける映画」「感動作」という反応が相次ぎ、若い世代の間で話題になった。「Douyin」や「Weibo」などのSNSで、毎日のように本作が人気検索ランキングの上位にランクイン。結果として、すでにオンライン配信も始まっていたにも関わらず、大勢の観客が劇場に押し寄せたという。8月中旬まで1000万元(2億円)強だった累計興行収入は、たった2週間で1億元(20億円超)まで跳ね上がった。この手の「文芸片」としては破格の数字である。映画は幅広い層の支持を集めたが、中心となったのは20~30代の若い世代、とりわけ大都市に暮らす観客だった。中国では近年、経済が急速に発展する一方で格差は拡大し、受験や就職、結婚における過当競争が深刻化している。2021年には、組織や業界の内部で競争がエスカレートし、人々が無意味に消耗する状態を表す「内巻(involution)」という言葉が大流行した。昨今の厳しい競争社会に疲れた都市の若者の心に、農村の中年夫婦を描いた本作が響いた、というのがヒットの理由の一つだと思われる。
リアル『小さき麦の花』も登場。映画は社会現象に。
中国の動画サイト「Bilibili」には「帰省して3日、おじさんが私の精神的消耗を治してくれた」と題する動画が投稿され、大きな注目を浴び、社会現象になった。障がいを負いながらも田舎の村で慎ましく、懸命に生きるおじの人生を紹介し、それを見て都会ですり減った自分の心が元気になったと語る動画である。「リアル『小さき麦の花』だ」というようなコメントが多数投稿され、この動画と本作を比較するような記事も現れた。そんな状況も、この映画がヒットする下地を作ったのだろう。本作が描くのも、不条理な状況に置かれても自分のなすべきことを見失わず、淡々と生きる主人公ふたりの姿であり、彼らのあり方を見て共感する人も多かったに違いない。「奇跡」は、起こるべくして起こったのである。
Comment
コメント
(順不同・敬称略)
セリフの少い無口で静かな画面が、
愛と人間、暮らしと政治について力強く雄弁に語りかけてくる。
——まぎれもない傑作。
山田洋次(映画監督)
映画『小さき麦の花』主演女優ハイ・チンさんと、
日中の映画祭でお会いしたとき予感がありました。
女優としての確かな成功。主演した作品の世界の反響。
リー・ルイジュン監督の愛情物語は、感慨深く、映像が心に沁み入ります。
栗原小巻(女優、日中文化交流協会副会長・理事長)
都市への出稼ぎを拒み、黄色い大地に生きる農夫の馬有鉄が
体に幾つも障害のある新妻曹貴英と過ごす一年とは、
燕麦を植え泥煉瓦で家を建てジャガイモを収穫して借りを返す日々――
清く貧しく美しい農村伝統の暮らしなのです。
夫婦とロバ・鶏との対話に落涙しました。
藤井省三(現代中国文学者)
愛とは、人とは…
相手を思いやる気持ち
作物や動物の尊さ
約束は守る
作物どころか、家までも作るたくましさ
きちんと生きている人に学ばされた。と感じる映画です
財前直見(俳優)
思い出したのは隣に住んでいた小柄なおばあさん。
家族のために痩せた土地を耕し担いで岩をどかし堆肥を運び。
林業と稲作と子育てと介護の合間にひとり続けて30年。
やっといい畑になったと野菜を分けてくれた。クイインの様な笑顔で。
五十嵐大介(漫画家「リトル・フォレスト」)
こんなラブストーリーは観たことがない。
お洒落なデートも、ロマンティックな台詞も、キスシーンさえもない。
あるのは、土壌改良をするかの様な神聖な生活。幸せに生きるふたりの、優しいひととき。
その詩的な美しさに、観客は泣き笑いの顔になるはず。
四季に寄り添い、愛を収穫するリー・ルイジュン監督の“登熟”作!
小島秀夫(ゲームクリエイター)
ひよこを孵化させる段ボールに開けられたいくつもの穴から光が発光しているさまは、新しいいのちの力強さを予感させる。
夫婦がお互いに手の甲につくる花のしるしは、言葉数が少ないふたりの思いを目に見えるかたちで表している。
そういった小さな出来事は彼らの日々のなかのささやかな幸せや希望の象徴のようにも見え、慎ましい暮らしにおいても美しさは日常のなかにあると気づかせてくれる。
暗い道辻で夫の帰りを待つクイインが、夜道を照らす光を抱いて夫の帰りを待っているように、自分も胸の内に光を絶やさないように生きたいと思った。
川内倫子(写真家)
いつの時代も中国の農民たちは苛酷な運命を受け入れ、懸命に生きてきた。
「共同富裕」(みんなが豊かになる)というスローガンは容易に実現できるものではない。弱者に寄り添い、中国農村の厳しい現実を描いたこの映画は貴重だ。
飯塚容(中央大学教授)
叙情的な蒼色がつむぐ、言葉少ない2人の純粋な愛に、
ただ自然と胸が震え無性に泣けてきました。
人は土を裏切り続けても、土は人を裏切らない。
性をも超越した2人の献身的な愛は、
荒涼とした原野に永遠に咲き続ける力強い麦の花のようです。
工藤夕貴(女優)
物語が進むごとに妻クイインはどんどん美しくなっていくのですが、その理由は、毎日、毎分、毎秒、お互いを大切に思い、思いやりのある言葉をかけ合い続けたからではないだろうか。はあ……滝藤、愛妻家だなって自負していましたが……。恥ずかしい。まだまだ愛が足りませんでした。
滝藤賢一(俳優) GOETHE 2023年3月号より抜粋
夫婦寄り添い、一途に土と共に生きる姿は究極のサステナブルな愛。
頑固で純朴で美しく...小さき麦の花が伝えてくれたものは愛おしく厳しく優しく切なく......
私の心の深い所で忘れていた懐かしい景色と重なり、涙が溢れて止まらなかった。。。
林マヤ(芸農人)
なにをもって「優しさ」なのか。
なにをもって「愛情」なのか。
ひとつひとつの言動にいちいち考えさせられる。
2人の愛がとっても美しかった。
彼らにとっての小さな幸せを眩しいと思ってしまった自分にハッとさせられた
私の価値観はこれで合っているのだろうか
井上咲楽(タレント)
土を耕し種を蒔く、それが生きるということだ!
それを取り巻く社会や貨幣、宗教など一見重要らしき構造は
今や悲劇の装置にしかなりえず、「生かす=生きる」喜びには代わらない。
この映画は私たち多くが失った本質的な喜びを描いている。
山﨑樹一郎(映画監督)
厳しくも豊かな土地に刻まれる、慈しみ深い夫婦の記憶。
映画とは、命の煌めきを永遠に存在させるために、
この世に産まれたのだと教えてくれました。大切な誰かとこの映画を観てほしいです。
藤元明緒(映画作家)
小さな麦の花と共に育つ、大きな愛。
何気ない風景、何気ない仕草、何気ない一言に、涙が止まらない、、、
命の温もりを感じる、美しい作品でした。
はな(モデル・タレント)
淡々と移り変わる季節に、ドキュメンタリーを観ているかのようなリアルな生活風景。
あまり言葉のない2人の日々の中にある、
貧困の苦しさに飲み込まれることのない静かな愛に心打たれました。
「小さき麦の花」という邦題が好きです。
李姉妹(YouTuber)
朝起きて昇りきった太陽の光が差し込むカーテンの横で、ゆで卵をかじりながら本を開き隣にはレモンサワー。
当たり前の日常、愛してるなんて言葉はない。だけどその日常を噛み締めてみればとても甘く幸福感に満ちている。
平凡だと思う日常こそが愛しく幸せなことなんだと気付かせてくれる、柔らかな温かさがある作品でした。
酒村ゆっけ、(酒テロクリエーター・作家)
大地に足をつけて黙々と働く。
その姿を淡々ととらえるだけの映画がどうしてこれほどひとを感動させるのだろう。
それは、清貧とか実直という、
ひとが生きる基本となる徳を現代のわれわれが忘れてしまっているからではないのか
川本三郎(評論家)
お気に入りの動画チャンネルで
飽かず眺める、二人と一匹が世界の片隅でひたすらいとなむ日々にも見えて、
何度も胸が苦しくなり張り裂けそうになる。
生きるのが過酷でも、傷つく感情を捨てないことはなんて美しい力だろう。
鈴木卓爾(映画監督・俳優)
淡々と描かれる農作物のライフサイクルと
2人の成熟していく関係が何よりも美しく、心を奪われました。
現実がどんなに残酷でも、生活は続くしお腹も空く。
見終わった後、大切な人とほかほかの饅頭を口いっぱいに頬張りたくなります。
長谷川あかり(料理家)
誰に何を言われたって、ふたりは次第に寄り添いあって自然や動物たちと共に生きようとする。
その土地でしか育めなかった関係性や喜びや残酷さがある。
ふたりの強さや合間に差す光を静かに受けて、夢中になっていました。
ラッキーオールドサン ナナ(音楽家)
人はひとりでは生きていけない。
砂に描いた絵のような映画でした。
音が、光が、ことばを遮る翳が、はかない生命の熱を伝えている。
ラッキーオールドサン 篠原良彰(音楽家)
Review
レビュー
無理やり仕立てられた結婚から、
真の愛が花開くまでを描いたこの詩的な物語は、
リー・ルイジュン監督のキャリアの中で観るものの
心を最も強く打ち、最も共感を呼ぶ作品である。
John Berra(英Screen International)
自然の中で生きること、春に植えて夏に育ち、
秋に収穫して冬は籠るという
四季の移り変わり、農民と土地との関係
いったことを、極めて自然に描いている。
この映画は私たちに見えていなかった人、
見えていなかった土地を見せてくれた。
観客に主人公たち“棄民”の姿を見せ、彼らの美しさ、その人生の意味を見せ、
彼らが他者に何かを与え、
また他者を通して誰かに何かを与える様を、
彼らが互いを生かし、互いを豊かにする様を見せている。
戴錦華(映画学者、北京大学教授)
この映画には、チャン・イーモウとコン・リーの
初期のコラボレーションや他の
第5世代の名作の痕跡を見ることができる。
あるいは、おそらく、この哀歌的な物語の
主題となる懸念のいくつかは、
現代中国における都市化の影響に関する
ジャ・ジャンクーの記憶に残る映画
関連付けることもできる。『小さき麦の花』は、これら
著名な現代中国の名作との
比較に値する。
Eren Odabaşı(International Cinephile Society)
この輝かしい映画を観た後、観客は
白ウサギのように
真っ赤に泣き腫らした目

劇場を後にした。
Sandra Onana(仏Libération)
質朴、繊細、迫真。
苦しみを表現しているが、苦しみに埋もれてはいない。
一杯の淡い茶のように、かすかな香りの中で
人の心を慰めてくれる。
斯涵涵(中国・荔枝新聞)
平坦に見える生活も、
砂漠の中の澄んだオアシスのように、
愛情という潤いに満ちた沃土である。
愛という字は一度も出てこないが、
愛情の本質が極限まで表現されている。
搜狐