多くのファンに愛される伝説の映画
『タレンタイム~優しい歌』のヤスミン・アフマド監督
もうひとつの傑作がついに初の全国劇場公開
Introduction
2009年7月25日に急逝したマレーシアのヤスミン・アフマド監督。見た人の多くが「オールタイム・ベスト1!」と絶賛する『タレンタイム~優しい歌』(09)とともにもうひとつの傑作といわれる『細い目』(04)がついに全国で劇場公開となります。観客の心に涙と笑いを。社会のあり方を問いながらも喜びを届けつづけたヤスミン監督らしい名作です。細い目とは、中国系の目が細いことをからかうマレーシアの言い方。この映画の大ヒットをきっかけに、チャーミングな目と価値観さえも変えたといいます。
『細い目』は、普遍的なラブストーリーであり、家族の愛情や友情を描く普遍的な人間ドラマであるとともに、一方で、民族や宗教が異なる男女の恋という当時マレーシア映画が描こうとしなかった題材をとりあげています。また、マレー語映画が主流であった時代に英語、マレー語、広東語、などが飛び交う多言語の映画として完成させたことからも、マレーシア映画界を革新し、より寛容な世界を望んだヤスミン監督の勇気ある優しさが感じられる作品です。
主演は、ヤスミン監督のミューズ、当時17歳のシャリファ・アマニと映画初出演のン・チューセン。ヤスミン・ファミリーといえる役者たちが若いふたりを支えています。マレーシア・アカデミー賞でグランプリ、監督賞、脚本賞、新人男優&女優賞など6部門を独占し、第18回東京国際映画祭でも最優秀アジア映画賞を受賞。ヤスミンの名前を一躍、世界に知らしめた必見の一作です。
Story
オーキッド(シャリファ・アマニ)は、香港映画のスター、金城武が大好きなマレー人の少女。ある日、香港映画を探しに友達と市場に出かけた彼女は、屋台で海賊版の香港映画VCDを売る中華系(華人)の少年ジェイソン(ン・チューセン)と出会う。
ジェイソンは、オーキッドを見て、一瞬で恋に落ちてしまう。
それから二人は、ファストフード・レストランや公園でデートを重ねる。会うたびにどんどん心が近づいていく。
ジェイソンの親友キョン(ライナス・チャン)は、最初はマレー人のオーキッドを嫌っていたが、広東語も話し、香港映画が大好きなオーキッドと気が合い、あっという間に仲良くなり、ジェイソンがやきもちを焼くほどに三人は仲良くなる。
オーキッドの家族は、少し変わっている。母親(アイダ・ネリナ)も父親(ハリス・イスカンダル)もお手伝いのヤムさん(アディバ・ヌール)とまるで友人のように話す。母も父も、ジェイソンが華人であることも気に留めず、二人の交際を優しく見守る。
一方、ジェイソンの家族は、父親が車椅子生活になってから生活は大変だが、それでも母(タン・メイ・リン)は愛情あふれ、息子の恋心をからかいながらも、オーキッドとの交際を受け入れる。
互いの家族に温かく見守られながら、二人は、かけがえのない初恋を育てていくのだが……
しかし、ジェイソンには逃れられない過去があった…。