ウー・レイやジアン・チンチンといった演技力に定評ある俳優をキャスティングした理由を教えてください。
監督:ウー・レイを起用したのは、ムーリエンという青年を「自然の子」にしたいと思ったからなんです。ウー・レイは若い世代の俳優の中で、そういうイメージにぴったりです。彼には太陽のようにはつらつとした感じがあります。「自然の子」というイメージから、もっとワイルドな感じのある俳優を選ぶこともできたと思いますが、山水映画には、伝統と現代のバランスが大事です。完全に野性的な人や昔風の人ではダメで、あくまで現代の大学生でなくてはいけなかった。ウー・レイはこういう特徴を満たしていました。彼は現代の文明社会に生きていながら、自然とつながる可能性を秘めている。ウー・レイはまさに適役だったと思います。
ジアン・チンチンさんを選んだのは、古典的な美女のイメージが強くて、古代の女性のような気品をもっているからです。それでいて、彼女は重慶出身のせいか、どこか侠女のような男気があるんです。それから爆発力も鍵でした。脚本を書いていたときから、これは難しい役になるなと思っていました。この母親役は、ある意味でいろんな役を演じなくてはいけない。茶摘み女を演じ、マルチの被害者を演じ、他人を騙す側の人間も演じなくてはいけない。特に橋の下の場面では、強いパワーを見せられる女優でないとダメだと思っていました。一人の人間が〈魔〉になる、こういう瞬間は中国映画にはなかなか出てこないんです。だからこそ、そういう瞬間を演じきれるエネルギーをもっていて、同時にその瞬間に飲み込まれてしまわない力も必要なんです。こういうシーンを撮ると、俳優自身が傷つくこともあると思うので。そういう意味で、実際の彼女が持っている力も大切でした。
コントラストと矛盾を浮かび上がらせる。