STORY
それは宝物?
それともかさぶた?
映画監督を志すサムキは、
いまは離れてしまった幼友だち、
ラモとの記憶を映画にしようと
故郷チベットのラサに戻ってくる。
子供のころの近視のメガネ。
みんなで楽しむリンカ。
父のカメラ。
母の留守。
三つ編み。
キラキラ光る刺繭のおサイフ。
そして中国内地への進学と文通友だち……。
映画の撮影をすすめる中、ある日、サムキは
突然、大人になったラモと再会する。
誰かから見れば、
宝物のような記憶だったかもしれない。
でも本当は、かさぶたになった
記憶なのかもしれない。
どっちなんだろう。
それは本当の記憶?
それとも映画のストーリー?
映画の撮影をする
大人のサムキを描く[ 現在 ]と、
小学生から中学生にかけての
彼女の少女時代を描く[ 回想 ]。
そう思って見ていると、
「これは回想ではなくて、
映画の撮影だったの?」
と揺らぎはじめる。
さらに大人になったサムキとラモが、
幼少期の思い出を語ると、
互いの記憶が
異なっていることが描かれる……。
記憶が真実なのか、わからない。
映画のストーリーが真実なのか、
わからない。
それでも。
そこに美しい夏はあった。



瑞々しい。映画にそんな感情を抱いたのは、何年ぶりだろうか。
いや、何十年ぶりかもしれない。
カンドゥン監督は大人の価値観を捨てて、見事に子どもそのものに迫っている。
ひこ・田中(児童文学作家)