希少本
rare books
本作で登場人物が語る「rare books」という英語には「希少本」という日本語字幕をあてている。日本の古書界では「稀覯本(きこうぼん)」という言葉を使うことが多いが、以下の理由による。
・「稀覯」という言葉に一般的な観客は馴染みがなく、また漢字としても馴染みがなく、字幕を出すたびにルビが必要なこと
・「稀覯」と「希少」がほぼ同義語であること
・「稀覯本」は、和書では嘉永3年頃 (1850)、洋書では1500年以前に印刷されたものを稀覯本とみなすことが多いとされ、本作のrare books は、それにあたらない本を指す場合が多いこと。
ダ・ヴィンチのレスター手稿またはハマー手稿
Codex Leicester, Codex Hammer
映画に登場するレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿は、1719年にレスター伯トマス・クックがイタリア人画家から購入したことで「レスター手稿」と呼ばれ、その後石油王アーマンド・ハマーの手に渡り、「ハマー手稿」とも呼ばれた。1994年、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツが、ニューヨークで行われたクリスティーズのオークションで2800万ドル(約28億4千万円)で落札。史上最高額の本となった。その内容は、水理学、天文学に関する事柄で、革の装丁がなされている。ゲイツは、その手稿を1年に1度、世界中の各都市で公開しており、2005年には東京の森アーツセンターギャラリーで展示された。2018年〜2019年には、ダ・ヴィンチの死後500周年を記念し、フィレンツェのウフィツィ美術館に展示された。また、手稿のページはスキャンされデジタル画像となり、その一部は、マイクロソフトのスクリーンセーバーや壁紙に採用されたこともある。
「不思議の国のアリス」の手稿
Alice's Adventures in Wonderland Manuscript
イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンがルイス・キャロルの筆名で書いた児童小説。1865年刊行。キャロルが知人の少女アリス・リデルのために即興でつくって聞かせた物語がもとになっており、キャロルはこの物語を手書きの本にして彼女にプレゼントする傍ら、知人たちの好評に後押しされて出版に踏み切った。最初に手書きで作った『地下の国のアリス』が完成したのは1863年2月10日のことであったが、キャロルはさらに自分の手で挿絵や装丁まで仕上げたうえで、翌1864年11月26日にアリスに贈った。
「若草物語」のオルコットが偽名で書いたパルプ小説
Louisa May Alcott as A. M. Barnard
アメリカの作家ルイーザ・メイ・オルコット(1832-1888)は「若草物語(Little Women)」で知られる。「若草物語」の主人公ジョーと同じく、オルコットも主にA・M・バーナードのペンネームで「仮面の陰で(Behind a Mask)」他パルプ小説を書いていたことは、1943年にロステンバーグが論文を発表するまで世に知られていなかった。
セラー、コレクター双方、ネット時代に疲弊の様子。
コレクション対象をSF、ヒップホップまで広げて少ない金の上手な使い方も教えてくれる。